2011年11月15日火曜日

後世に何を残すか


以前のエントリー(When you chase success, who follows you?)でも紹介した、View from the Topという、ビジネスリーダーによる講演の今回のゲストスピーカーは、Bill George。

同氏は、医療機器製造会社であるMedtronicのCEOとして同社の成長に大きく貢献したビジネス・リーダーで、現在は母校であるハーバード・ビジネススクールで教鞭を取る(リーダーシップ教育担当)傍ら、Exxon MobilとGoldman Sachsの取締役も勤めている。執筆活動にも精を出し、3つのベストセラー(True North、Finding Your True North、Authentic Leadership)の著者でもある。


講演のテーマは著書の一つの題名でもある「Authentic Leadership(真のリーダーシップ)」。

同人曰く、リーダーは、自分の強みを伸ばし、弱さをうまく対処する必要がある。弱さ/自分の知らないことをきちんと自己認識し、学習しながらも、その弱さを補ってくれる仲間に協力を求め・必要に応じて権限を委譲することが寛容だ。単純なことであるか、これができている者は少ない。実際、彼がMedtronicのCEOとして結果を残せた理由の大きな一つは、彼自身が医療の専門知識に関する自己の知識の限界を認識し、専門知識を有する優秀な人材にそれらを任せたことにある、と彼は言っていた。


今後のキャリアについて模索する我々学生に向けて贈ってくれた最後の言葉がとても印象的だった。

「今から何十年か後、自分の孫に見守られながら息を引き取る間際の自分を想像して欲しい。あなたは孫になんて語りかけるか。きっと、あなたが人生をかけて成し遂げた(make a difference)何かを伝えたいのではないか。お金をいくら稼いだかなんて、その時点ではどうでもいいだろう。あなたは後世に何を残したいか。」

「成し遂げたい何かがあるなら、それを自分が年を取るまで待っていてはだめだ。毎日の継続した積み重ねでしか物事は成し遂げられない。」

「卒業後の進路選択においては、目先の給与なんて気にする必要はない。MBA卒業直後の給与が一番低かった仕事についた者が、30年後は一番経済的に成功しているという話なんてよくあるものだ。」

「自分の心の中の声に耳を傾けよう。そして、自分の心・直感に従おう。」


   *   *   *

講演の後、学生の一人が「医療という人の生命に深く関わる事業のCEOとして、株主と他のステークホルダーの利害の調整について、どのように考えますか?」と質問をした。

この質問に対して、彼はこう答えた。

「ビジネスは社会があって初めて存在しえるものだ(Business is chartered by society)。企業は決して株主価値を創造するための道具ではない。その逆で、事業によって創造した価値の余剰が株主に回るだけだ。」

このような考えを有する経営者が長期的に大きな株主価値を創造したという事実は、多くの経営者が短期的な株価/時価総額の最大化を絶対命題としながら長期的な株主価値創造に失敗しているという事実に照らして、逆説的で非常に興味深い。


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