2011年11月16日水曜日

インパクト・インベストメントの次世代リーダー


シリコンバレーでも最近Hot Topicとなってきているインパクト・インベストメント(その定義については以前のエントリーを参照)について、業界経験を有する学生による、同業界に興味のある学生に対するパネル・ディスカッションが開催された。

 

パネル・ディスカッションに参加した学生の経歴は下記の通り。経歴からみても、伝統的なエリート・キャリアの道を歩んできた者が、インパクト・インベストメントという新しい投資手法に興味を持ち、その可能性を信じて、変革を起こそうとしている様子が伝わってくるのではないか。
  • J(中国人女性)-投資銀行/PEファンド出身のMBA2年生。夏に、以前のエントリーもで紹介したImpactAssetsでインターンを経験
  • K(アメリカ人女性)-New York拠点の著名Impact Investing firmであるAcumen Fund出身のMBA2年生。AcumenではNew Yorkオフィスに加えインドにおいて投資先の経営サポートに従事。スタンフォードでは(僕と同様)MBAに加えて環境科学のMSも履修。
  • B(フランス人男性)-金融関係のコンサルティング会社出身のMBA2年生。夏に、マイクロ・ファイナンス会社であるAccionでインターンを経験
  • V(アメリカ人女性)-不動産投資ファンド出身のMBA2年生。夏に、Gates Foundation(ビル・ゲイツによって創設された世界最大の慈善基金団体)でインターンを経験
  • C(アメリカ人女性)-投資銀行の自己投資部門出身のMBA2年生。夏に、New Island CapitalImpactAssetsでインターンを経験。
  • C(アジア系アメリカ人女性)-国連/経営コンサルティングファーム出身のハーバード・ケネディ・スクールとスタンフォードGSBのDual Degreeの2年生。 夏に、White House Office of Social Innovationでインターンを経験
  • J(アメリカ人男性) - 投資銀行/PEファンド出身のMBA2年生。夏にサンフランシスコを拠点とするImpact Investing firmであるNew Island Capitalでインターンを経験。
  • C(アメリカ人女性)-経営コンサルティングファーム出身のMBA2年生。 留学前の1年半の間、アフリカで農業ビジネスのコンサルティングをしていた。夏にAcumen Fundでインターンを経験。
  • J(中国人女性)-投資銀行/IFC(世界銀行の投資部門)出身ののMBA2年生。夏に、Social Financeでインターン。

パネリストの経歴を見るとファイナンス出身の人が多い。これは、Impact Investing firmによる投資の際のデュー・ディリジェンス、案件の実行においては、M&A/資金調達等の投資銀行業務のスキルが必要不可欠である一方で、Impact Investing firmには、予算・内部リソースの制限から、社内でのトレーニングや外部専門家(コンサルタントや投資銀行)への仕事の委託が限定的にならざるをえず、したがって、Impact Investing firmは、入社後に即戦力で働ける人を採用したがる傾向にあることに起因するようだ。


パネリスト達は、望めば、卒業後も伝統的なファイナンスの仕事(PEファンド、ベンチャー・キャピタル、ヘッジ・ファンド、投資銀行)に就くことができよう。そして、その方が、Impact Investing firmでの勤務と比して相当程度大きな経済的利益を得ることができよう。しかし、彼/彼女達は、「自分が身につけたスキル(ファイナンス等)を用いて、世の中に良いインパクトを与えたい」という大きな志を持って、インパクト・インベスティングという未知の領域にチャレンジしようとしている。


あるパネリストは、個人としての経済的利益とやりがいについて、こう説明した。

インパクト・インベスティングの投資家が経済リターンと社会的インパクトのトレードオフに直面しているのと同様、そこで働くプロフェッショナルも、特に非常に給与水準の高い伝統的なファイナンス業界でも活躍することができるような者は、経済的利益(給与)と仕事のやりがいのトレードオフに直面する。このトレードオフは避けられないものだ。私はそれでもインパクト・インベスティングのキャリアを追求したいと思うし、そういった人は今後増えてくると思う。


聴講する学生に対して熱く語りかける同級生の姿を見て、とても誇らしく思うと同時に、身の引き締まる思いがした。

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