2011年11月25日金曜日

PEファンドによるロール・アップ


先日のInvestmentの授業のゲストスピーカーはJohn K. Saer氏。同氏は、1993年にKKRのポートフォリオ会社であるKSL Recreation Corporationに参画し、CFOとして同社の成長に大きく貢献した。KSLは、当時分散された(fragmented)市場であったゴルフ場業界のロール・アップ(追加買収/投資による規模/シェア拡大)を目的に設立された会社。当時、米国にはゴルフ場が約15,000コースあったが、上位10社により運営されていたコースはそのうちたったの5%だった。多くのゴルフ場は1980年代を通じて過剰債務を積み上げており、当時、不動産市場は軟調であった。更に、ベビーブーマー世代が年を取るにつれ、ゴルフを含むレクリエーション一般に対する支出を増やすことが期待されるというマクロ的な追い風もあった。


結果的に投資は大成功。特筆すべきは、リターンの源泉が市況の変化(EBITDAマルチプルの増加)ではなく、買収したゴルフ場の事業の改善(EBITDAの
増加)であった点だ。あるゴルフ場は、投資期間でEBITDAが10倍に増加したという。同社の成功もあり、彼はKKRのパートナーに就任し、2010年にKKRを去るまで、Portfolio Management Committeeのメンバーも務めた。

印象的だったのは、 同氏は、自らをFinancial Operatorと言い、投資チーム(Financial Engineer)と明確に区別していた点だ。Financial Engineerが、事業スコープの決定、ディール・フロー、金融機関とのリレーションシップ、優秀な人材のプールを提供し、Financial Operatorがオペレーション、戦略、マーケティングを担当する、というように明確に異なる役割を定義していた。KKRは投資チームの採用のほとんどをウォールストリートのインベストメントバンクから行い、また、大規模案件におけるフィナンシャル・アドバイザリー(FA)/資金調達のビジネスを通じてインベストメントバンクと良好な関係を築いている最も「インベストメントバンク的」なPEファンドの一つだが、このような明確な役割分担は、同社の特徴を表わしているようで興味深かった。

この点に関連して、以前、KKRの創業者の一人であるGeorge Robertsの話を聞く機会があり、投資先の企業価値向上についての話が(戦略コンサルティングファームの面接でも通用しないような)一般論に終始し、期待外れだったとともに、疑問に思ったのを強く記憶している。Johnの話を聞いて、KKRの成功が、彼のような優秀なOperatorによって支えられているという点を強く認識した。


   *   *   *

ゴルフ場のロール・アップといえば、日本でのアコーディア・ゴルフ(ゴールドマン・サックスの投資先)やPGMホールディングス(米系PEファンドであるローンスターの投資先)の2000年代前半以降の活動が思い出される。

僕が弁護士になった2004年以降も、地方勤務の弁護士と話すと、地方ゴルフ場の、外資スポンサーの再生案件の話がよく出たものだ(もちろん守秘義務に反しない限度で)。似たような経験を既に積んでいる米系投資銀行/PEファンドが迅速に行動に移すことができたのは、振り返って考えてみると当然のことだ。当時、国内には、不良債権を処理する立場にあった日系銀行は当然として、こういった案件に対するリスク・キャピタルは存在しなかった。

米国に限らず、他国の事例から日本に適用可能な投資テーマがまだあるかもしれない。また、逆に日本の事例で他国(特に今後、現在の先進国と似たような経済/業界発展を経験するであろう新興国)に適用可能なテーマもあるように思う。ゴルフ場のロール・アップは、完全に国内向けの投資であったとしても、グローバルな視点を有することが重要であることを示すよい事例であるように思う。


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2011年11月23日水曜日

スタンフォードMBAの特権


スタンフォードMBAの特権の一つとして、シリコンバレーの起業家と接する機会が多いという点が挙げられる。現在、トップMBAでは起業(entrepreneurship)の教育に力を入れており、様々な授業・課外活動をプログラムに取り入れている。しかし、実際に、数多くの起業家が活動しており、それを支える資金供給者(ベンチャー・キャピタル(VC)、個人投資家(エンジェル))、大学等研究機関、投資銀行、弁護士事務所、会計事務所、コンサルタント等から成るエコシステムが存在するシリコンバレーに存在するスタンフォード大学は、起業の実践を学ぶ場所としては最高峰と言えよう。

例えば、僕は現在、シリコンバレーのVCから投資を受けているクリーンテック関連のスタートアップと、あるプロジェクトを行っている。CEOとは電話会議で話したことしかなかったが、CEOがシリコンバレーの老舗VCであるクライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズ (Kleiner Perkins Caufield & Byers。通称KPCB)と同社からの潜在的出資の話をするためシリコンバレーに来るということで、現在出資を受けているVCのオフィスで初めて顔を合わせてのミーティングをした。場所はシリコンバレー、サンドヒルロード。KPCBを初めとする多数の著名VCの本社が存在するVCのメッカだ。



この他にも、スタンフォードMBAの授業には、ケース・スタディーでスタートアップのケースを取り扱い、そのケースの主人公であるCEOを授業のゲストとして呼び、体験談を共有してもらう、という形式の授業が複数存在する。それらのCEOとは、望めばランチをする機会が与えられることもあるし、授業の後、質問をすれば気軽に応じてくれる。

こういった機会が多数存在し、多くの起業家と接しているうちに、自分も何かできるかもしれない(make a difference)と良い意味で錯覚に陥ることができる、というのがスタンフォードMBAの最も際立った特徴の一つであるように思う。



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