2011年12月13日火曜日

全てのリーダーの5つの共通点


View from the Topの今回のゲストスピーカーは、Ian Davis。イギリス出身の彼は、マッキンゼー・ロンドン・オフィスでマネージャーを務めた後、2003年から2009年の期間、マッキンゼーのグローバルCEOを勤めた。2010年にマッキンゼーを退職した後も、現在はBPの取締役も勤めるなど、精力的な活動を続けている。

彼は、ビジネスに加えて、Non Profitの分野でも積極的に活動をしており、Teach for Allの理事や、(僕の母校である)東京大学のPresident'sCouncilのメンバーも勤めている。


本エントリーでは、彼が我々に語ってくれたリーダーシップ論を共有したい。


1. リーダーシップに絶対唯一の解はない

リーダーシップを一般化することはできない。(ビジネス)リーダーシップのスタイルは業界によって異なるし、また、国によっても大きく異なる。例えば、同じくアメリカの会社であっても、テクノロジー会社と食品会社では有効なリーダーシップのスタイルは異なる。また、同じ業界であっても、アメリカと日本ではリーダーシップのスタイルは異なる。リーダーシップを考える際は、その文脈(context)を考える必要がある。



2. チームメンバーの視点からリーダーを考える

リーダーシップについて考える際に有効なのは、「チームメンバーの視点で見た場合に、リーダーに見られる共通点は何か」という視点だ。この視点で考えた場合に、私の経験からすると、全てのリーダーに共通な特徴が5つあると思う。


3. 全てのリーダーの5つの共通点

進むべき道(direction)を提示する

一つ目は、進むべき方向を提示すること。ビジネスであれ、それ以外であれ、不確実な状況の中、チームの進むべき方向を示すのがリーダーの役割だ。

物事を始める(initiate)こと

次に挙げられるのが、自ら物事を始めるという点。どんなリーダーも、誰かの指示を待つのではなく、自ら物事を始めるという点で共通している。

物事に執着する

3つ目の特徴は、物事に執着すること。リーダーは、チームの目標やすべきことに誰よりも拘り、懸命に取り組む存在だ。

他人にやる気を与える(motivate

リーダーは、チームメンバーにやる気を与える存在である必要がある。手段は人によって異なる 。公平にメンバーを評価することに重きを置くリーダーもいれば、権限を与え、励ますという手法を用いるリーダーもいよう。ただ、リーダーとして成功するためには、メンバーにやる気を与えることが必要不可欠だ。

実例で示す

最後に挙げられるのが、リーダーは実例で示す、という点だ。成功したリーダーは、リーダーシップについて語るのではなく、実際に行動でそれをメンバーに示す。


4. 得意なことをせよ!

時折、リーダーシップと道徳の関係について語られることがある。ただ、私の経験に基づくと、有効なリーダーが必ずしも道徳家であるというわけではない。私は、社会正義を組織のビジョンとして掲げていなくとも、上記の5つの点を実践し、リーダーとして成功している人を数多く知っている。

もちろん、成功したビジネスリーダーが社会問題に関心を持つことはいいことだ。しかし、何が最も有効な関わり方かは一筋縄ではない。この点に関連して、私の興味深い経験を一つ紹介したい。マッキンゼーのあるオフィスのパートナーの知人が、以前、こんな悩みを私に相談してきた。

「私はコンサルタントとしてそれなりに成功してきており、その結果、裕福な生活を送ることができている。ポルシェも一台所有している。しかし、自分が本当に世の中の役に立っているのか日々疑問に思ってきていた。色々悩んだ末、マダガスカルで孤児院を経営することを真剣に考えている。」

彼はコンサルタントの職業が得意で、それで成功することができた。しかし、孤児院の経営者として成功するかはわからない。コンサルタントがお金をもらえるのは、アドバイスが企業の役に立っているからで、何も引目を感じることはない。私は彼に、「得意なことをして稼いだお金を寄付するという方法もあるのではないか」と進言した。

彼は結局、マッキンゼーに残り、マダガスカルの孤児院に寄付をすることとした。その孤児院は現在1,400人の収容を誇る大きな孤児院となった。結局、彼は仕事・社会問題解決の双方において、世の中に大きなインパクトを与えることができた。しかも、もう一台のポルシェというおまけもついて、だ。


キャリアに悩んだら、自分が好きで得意なことをすることを選んで欲しい。



   *   *   *

上記に加えて、講演の中で最も印象的だったのが、「子供を持つというのは人生において決定的な事柄だ。親として子供を育てるのは、まさにリーダーシップの発揮に他ならない。」というコメントだ。

自分は彼が言う5つの要件を満たすような行動を子供に示せている/示す準備があるだろうか?Ianの講演は、ビジネスにおけるリーダーシップに加えて、親としての自分の責任を再確認するいい機会になった。



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2011年12月1日木曜日

ビジネススキルを用いた社会への貢献


Stanford GSBでは、ビジネススキルを用いて社会問題の解決に貢献することをミッションとする、Public Management Program(PMP)がある。PMPは、毎年50を越す教育、環境、ヘルスケア、国際開発、公共政策、NPO、社会起業等の授業を提供しているほか、実務を通じて学習をすること機会を多く提供している。その一つが、Board Fellowsと呼ばれるもので、8ヶ月の期間、ベイエリア所在のNPOのBoard(理事会/取締役会)メンバーを務め、前職及びMBAで培ったビジネススキルをNPOが抱える課題(例えば、ブランド戦略、ファンドレイジング等)の解決に生かすというプログラムだ。



インパクト・インベストメント、社会起業といったブログのエントリー、そしてMBAに加えて環境科学の修士課程(クリーンテック)にも在学していることからもわかるように、僕は、ビジネスをうまく用いて社会問題を解決することができないかという問題意識を持ってMBAに来た。

当初は、どちらかというとビジネスを直接用いた問題解決に注目していたが、こちらにきてから、ビジネスとは別に、ビジネスの現場で培ったスキルを用いて、または寄付という形で、社会活動を精力的に行っている人が多数いることに驚いた。同級生でも、とても忙しい仕事の傍ら社会活動を精力的に行っていたような人が多い。

以前のブログで、「若いうちは社会的な問題意識を持たずにがむしゃらに働いて、金持ちになってから寄付をする」という伝統的アメリカモデルに対する批判的な見解を紹介したが、周りを見る限り、少なくとも日本との比較においては、同年代のビジネスパーソンがより社会問題に対して意識を持つだけでなく、その解決に積極的に関わる姿勢が伝わってくる。僕も、弁護士になりたての当初は、国選弁護士として刑事弁護に携わったりしたものだが、その後は、忙しさを言い訳にして、公益活動は積極的に行わなかった。 


ビジネススキルを用いて社会問題の解決に貢献するというのは、僕にとっては新鮮な考えで、とても興味を持つに至り、今年は、上記のBoard Fellowに申し込んだ。その結果、今から8ヶ月の間、Breathe Californiaという、草の根レベルの教育その他の活動を通じて、喘息等の肺関連の病気と闘い、きれいな空気、公衆衛生の改善を主張することをミッションとするNPOのBoard Memberを務めることになった。

プロジェクトの内容等は、今後他のメンバーとの議論等を通じて詰めていくことになる。恥ずかしながら初めてのNPOの経験であるが、できる限り貢献をしたい。





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社会起業の先駆け


パタゴニアの創業者のYvon Chouinard氏の講演を聴講した。パタゴニアは、いうまでもなく世界的に著名なアウトドア用品製造販売会社だが、14歳でロッククライミングを始め、自身著名なロッククライマーでもあったYvon が、当初は自己の利用のために、ヨーロッパの優れたクライミング・ギアを自分流にアレンジした商品をつくり始めたのがきっかけとなり設立した会社。同社は環境問題に対して積極的な取り組みを行っており、オーガニック・コットンを業界内で先駆けて利用し、その後の業界のスタンダード(オーガニック・コットンの利用)の確立に大きく貢献したことで知られている。

氏は、講演の初めに以下の質問を我々に投げかけた。

利益を出していて株主からは評価されている会社のうちどれだけが、社会的責任を果たしているといえるか?例えば、地雷メーカーは、地雷が軍人よりも民間人を多く殺傷しているという事実をどう受け止めるか?タバコ会社は、吸うと確実に健康を害する商品を売っているが、その株主に社会的責任はないのか?GEは適法に税金対策をしている結果現在米国で税金を支払っていないが、それで社会責任を果たしていると言えるか?

 

1. 我々一人一人が自覚をもって消費すべき

現代の大量消費社会はどう考えても持続可能ではない。我々は市民(citizen)ではなく消費者(consumer)と化してしまった。特にアメリカ人の消費は異常で、世界中の人々が同じような生活をすると地球が7個ないと足りないという程度の資源の浪費をしている。西欧が1.5個なのに対して、この数字は際立っている。ブッシュもオバマも、消費が回復すれば経済が回復すると言い続けているが、消費の拡大は一見経済に貢献するように見えるが、長期的な地球の課題の解決と完全に逆行している。

経済発展、雇用の維持と環境の持続可能性は、消費者による賢い消費によって両立できると考える。高品質の商品は多くの労働を必要とするため、雇用の維持・経済発展に必要な需要の創出に寄与するし、長持ちするため、環境にも優しい。パタゴニアが作っているのはまさにそのような商品だ。

消費者が行動を起こせば、それに会社が反応し、最終的に政府が反応する。直接政府に働きかけても何も変わらないが、我々は、消費行動を変えることにより間接的に政府に大きな影響を与えることができる。


2. パタゴニアの取り組み

パタゴニアは、現在、売り上げ(利益ではなく)の1%を環境関連の団体に寄付している。もともとは、パタゴニアは再生エネルギーで自家発電しているわけでもなく、結局はネットで地球環境を汚染しているので、何らかの形で社会に還元するのが企業としての当然の責務であるという考えから始めた。この取り組みを"1% for the Planet"と呼び、2002年以降、積極的に他社を巻き込む運動を行った結果、現在、約1,500社の参加企業を有するまでに至った。

また、(買い手交渉力の著しく強い)ウォルマートと組んで、多くのアパレル会社を巻き込み、衣服の環境への優しさの度合いを示す指数であるSustainability Indexを衣服に付与し、消費者に選択のオプションを与える仕組みを作るという活動を現在精力的に行っている。

私は、パタゴニアのミッションは、以下の三つであると考えている。まず第一に、最高の品質の商品を作り顧客に届けること。そして第二に、その過程で環境に不必要な負荷を与えないこと。第三に、 ビジネスという手法を用いて環境問題を解決すること(Build the best product, cause no unnecessary harm, use business to inspire and implement solutions to the environmental crisis)。このうち初めの二つが達成できれば、三つ目は自動的に達成できると思う。オーガニック・コットンの利用を他社が真似ざるを得なくなったように、また、Sustainability Indexというアイデアでも挑戦しているように、我々が先導して環境に優しい商品を作り、消費者から評価を得ることができれば、他者もそれに追随する必要が生じ、その結果、業界全体がより環境に友好的な方向に進んでいくようになるからだ。


3. Take Action Now!

君達MBAの学生は、まずは金銭的に成功してから、世の中に還元しようと思っているかもしれない。環境を害しながら、あるいは少なくとも環境問題を無視して、成功してから、慈善家(Philanthropist)となり寄付をするというのは、典型的なアメリカ的な考え方だ。

しかし、もし環境問題に興味があるなら、今すぐに行動に移して欲しい。今すぐ行動に移し、習慣化しないと、そんな問題意識はいつか忘れてしまうだろう。実際、アメリカでは上位10%の所得の人が年間所得の1.5%しか寄付していないのに対して、下位10%の人々は6%分も寄付しているというデータがある。また、コーポレート・ファイナンスを学んだ君達は、割引率を考えると、遠い将来の100ドルより現在の10ドルの方が価値があることを理解しているだろう。今行動に移せば、そのお金は今動き出し、世の中に価値を生み出すんだ。



   *   *   *

近年、社会起業家(Social Entrepreneur)が話題になることが多いが、パタゴニアは社会起業の先駆けとも言うべき会社であると思う。もともと好きなブランドだったが、Yvonの話を聞いて、更に好きになってしまった。




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