2012年1月16日月曜日

投資ファンド出身の起業家


スタンフォードMBAの1年先輩(日本人)が最近メガネのEコマース・サイトOh My Glassesを立ち上げた。

スタンフォードMBAというと、一般には、(特に東の雄ハーバード・ビジネス・スクールとの比較では)起業というイメージが強いように思われる。実際、授業を受けてみるとわかるが、MBAが最近カリキュラムの中で強調しているリーダーシップについても、スタンフォードMBAで教えるリーダーシップは、ゼロからチーム/事業を作り上げていく際に必要なリーダーシップであり、大企業をどう変革するか、大企業の中でどう階段を上っていくか、という他のビジネス・スクールの多くで教えられるリーダーシップとは異なる点で特徴がある。

実際、同級生を見ても、起業する可能性を模索しにスタンフォードMBAに入学するものが多く、卒業後も自ら起業したり、(将来起業をすることを前提に経験のため)スタートアップに就職するものも多い。

ただ、日本人に限定すると、意外と起業する人の割合は多くない。在学中は起業のためのビジネス・プランを検討しつつも、結局は、投資銀行、コンサルティング、投資ファンド等のプロフェッショナル・ファームに就職する、というパターンが多いような気がする。


ただ、最近その傾向に若干の変化が見られる。

僕の2年先輩(弁護士で、僕の弁護士時代の事務所の後輩)は、mOasisという会社を起業し、CEOとして、農業ビジネスで革命を起こすべく、頑張っている。


冒頭紹介した1年先輩の名は、清川 忠康。在学卒業後、投資銀行・経営共創基盤(スタンフォードMBAの大先輩である冨山和彦氏が設立した企業再生ファンド/アドバイザリー会社)を経てスタンフォードに入学した清川氏は、1年目終了後の夏には、(僕を含める)最近の典型的なファイナンス出身のMBA生と同様、ヘッジファンドでインターンをした。

ちょうど1年前、夏のインターンのためのヘッジファンドのインタビューを受けるにあたって、僕は清川氏にアドバイスをもらった。そのときに、彼がこういっていたのを思い出す。

「ヘッジファンドの仕事は面白かったけれど、何かもっとチャレンジングなことをしたいと思っている。夏に少し働いたスタートアップでの仕事がすごく楽しかった。今はまだ具体的なプランはないけれど、何か事業を自分で始めたい。」

あれからまだ1年しか経っていないが、彼は、僕に言った内容を実現した。


投資ファンド出身の起業家というと、ハーバード・ビジネス・スクール出身で現在ライフネット生命保険の副社長を務める岩瀬大輔氏が有名だと思われる。僕自身、岩瀬氏と大学(東大法学部)・司法試験合格、投資ファンドという共通点を有することから、彼にはずっと注目してきており、実際、弁護士からビジネスに転進した際、彼のブログ(その後「ハーバードMBA留学記」として出版された)には大きな影響を受けた。岩瀬氏とは一度しか会ったことはないが、ブログや共通の知人を介して聞いていた通り、極めてシャープかつ人間味のある方だったことを記憶している。

以前のエントリーで一つの例を紹介したが、近年は、スタンフォードMBAでも、投資ファンド出身で、卒業後に起業(にチャレンジ)する人が増えてきているように思う。背景には、大学卒業後、(伝統的な)エリート・キャリアを歩んできた若者が、業界が成熟化してきており、より「サラリーマン的」な仕事に変わってきている投資ファンドという仕事ではなく、よりチャレンジングな仕事として起業という道を選ぶという事情があるような気がする。


Oh My Glassesの事業の詳細については、他に説明したものが複数あるようなので(下記参照)、ここでは触れない。数ヶ月前に、清川氏からメガネのEコマースというアイデアを聞いた際、(僕を含め)ネガティブな反応をした人が多かった気がする。もちろん、越える壁は多数あるだろうし、道は平坦ではないだろう。ただ、一つだけ言えるのは、彼には、それを実現する強い意思と力があるということだ。
 
清川さん、応援しています!


参考記事:

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