2012年3月15日木曜日

起業ノススメ

Stanford GSBの名物授業の一つに、起業家(entrepreneur)が、Business Ideaの発掘から会社の設立・事業拡大・Exist(売却・IPO)までそれぞれの過程で直面する問題に関して、ケーススタディーの形式で学ぶ、Formation of New Venturesという授業がある。本日は、その最終講義だった。

本コースでは、合計17のケースを取り扱い、合計24名のゲスト・スピーカー(ケースに登場する起業家)を迎えた。講義の前半にケースを元にクラスで議論を行い、後半にゲスト・スピーカーに対する質問の機会が与えられる、という形式で授業は進められた。

最終講義の本日、実務家教授のJim Ellisが、我々生徒にはなむけの言葉を贈ってくれた。


1. 起業家という選択肢の意味

起業は、他の職業と比べてより高貴な職業であるわけではない。素晴らしい職業は他にもたくさんある。全ての人が起業家に向いているわけでもない。もし、この授業で取り扱ったケースや訪問してくれたゲスト・スピーカーの話に興奮しなかったら、起業家という職業は向いていない。それがわかっただけでもこの授業を取った意味があると思う。

他方で、起業家という仕事はMBAの学生が典型的に進むキャリア(大手のコンサルティング、投資銀行、投資会社への就職)と比べて、責任(obligation)という点で大きく異なる。起業家は、従業員そしてその家族の生活に責任を有しているし、投資家にも全面的/直接的な責任を有する。また、起業家は多くのエネルギーと時間を割く必要があるし、孤独とも戦う必要がある。


2. 起業の成功の秘訣

この授業で見てきたとおり、起業に成功の秘訣などない。実際、君たちの多くは、ゲスト・スピーカーを見て、「この程度の人が成功したのなら、私も成功できるに違いない」と一度や二度は思ったに違いない。それは間違っていない。なぜなら、問題は「できるかどうか」ではなく「やりぬく意思があるかどうか」だからだ。

MBAで学ぶ戦略論やコーポレート・ファイナンスの知識はあった方がいいが、それが起業の成否を分けるわけではない。数多くのケースで見たとおり、起業家が直面する最も重要な問題は、MBAの授業では通常取り扱わないような問題、例えば、採用・解雇、カルチャーの維持等であり、何より重要なのでは、分析ではなく、実行力だ。そして、実行力は、全て人をどう管理・鼓舞するかにかかっている。

起業家は、とても孤独な職業だ。それゆえ、パートナーと共同して起業することも選択肢として考えられる。しかし、パートナーの選択には慎重であるべきだ。似たような興味やスキルを持った共同創業者のスタートアップは失敗するケースが非常に多い。共同で起業する際には、予め明確に役割分担をすることが望ましい。


3. タイミング

タイミングに関して言うと、起業は子供を生むのと似ている。仕事、給与レベル、教育の場所等を深く考えるといつまでたっても子供を生むという意思決定ができないのと同様、完全なアイデアやスキルの獲得を待っているといつまでも起業はできない。どこかの段階で割り切った決断が必要だ。そして、割り切った判断は、年を経て家族ができ、給与水準が上がると、益々しずらくなっていくものだ。


4. 成功する起業家の共通点

起業に成功の秘訣はないが、成功した起業家の共通点はいくつか挙げることができる。

まず、彼らは、明確な目標を設定し、そこに向かって進む突進力がある。この点は、多くのStanfordのMBA学生にも共通するだろうが、彼らが更に優れているのは、明確な目標設定/実現というフレームワークで動かないような人々に対しても、やる気を起こさせることができる点だ。それは通常、共鳴できるビジョンの設定、カルチャーの醸成、リーダーとしてのカリスマ性の発揮等を介して行われる。ゲストとして来校した起業家の多くがビジョンとカルチャーについて話していたこと自体が、その重要性を何よりも物語っている。

次に、彼らは、他人からアドバイスを受け、自己の間違いを認めるのに長けている。また、良いアドバイスを得ることができる前提として、彼らは、優秀な/素晴らしい人々に囲まれている。

彼らはまた、不必要なリスクを避けることができる。起業自体がリスクの高い職業であるが、その中であっても、取る必要の全くないリスクは存在する。彼らはそれを避ける術を知っている。

最後に、彼らは本能的に行動する人々である。彼らは、エクセルで複雑な計算したり、パワーポイントで綺麗なプレゼンテーション資料を作ることで評価されるわけではない。実行力が何より必要な資質である。


5. 最後に

起業という職業は、そのリスクが誇張される傾向がある。たしかに、起業はそのほとんどが失敗する。君達のように、今まで人生で目標を達成し続けてきた人々にとっては、失敗はとんでもなく怖いもののように映るかもしれない。しかし、考えてみて欲しい。君達のレジュメ(履歴書)があれば、仮に一度起業に失敗したとしても、就職先に困るようなことはないだろう。むしろ、いい経験としてプラスに働くだろうし、また他のスタートアップにチャレンジすることだって可能だ。失敗したケースのゲストとして来た起業家は皆「あの時こうすればよかった」と後悔していたが、誰も「起業しなければよかった」とは言っていなかったのを覚えているか?そのことが何を意味するか考えてみてほしい。

起業という職業は、その良い面が誇張される傾向がある。 起業家として成功しても、誰もがGoogleやFacebookの創業者のレベルの富を獲得できるわけではない。授業でも見たように、リスク・リターンの観点からは、起業は割のいい職業ではない。

多くの起業家にとって、起業は単なるお金を稼ぐための手段ではない。この授業では、自己の人生では使い切れないほどの富を築いた起業家を何人も見てきた。我々が生で感じたように、彼らはまだ自分の職業に誇りを持ち、毎朝仕事に行くのが楽しみと言わんばかりに仕事を楽しんでいる。彼らを突き動かすのはお金ではなく、自分が組織、顧客、業界、そして広く世の中に大きなインパクトを与えているという達成感/満足感だ。働く目的について、自分の胸に手を当てて考えてみて欲しい。もし君達がそういった達成感/満足感を味わいたいのであれば、起業という職業を強く勧めたい。



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