2012年3月4日日曜日

企業再生の第一人者・冨山 和彦さんとの会食

先日、スタンフォードMBAの大先輩である冨山 和彦さんと会食する機会を持つことができた。

 

冨山さんといえば、言わずと知れた企業再生の第一人者であり、グローバル経営コンサルティング・ファームであるボストン・コンサルティング・グループ(BCG)を経て、日系独立経営コンサルティング・ファームであるコーポレートディレクションを設立、その後、政府の打診により、2003年に産業再生機構の設立に参画し、代表取締役専務兼業務執行最高責任者(COO)を務めた。その後、2007年にコンサルティング・企業再生を取り扱う株式会社経営共創基盤(IGPI)を設立、代表取締役CEOに就任し、現在に至る。

世界・日本のマクロ経済の話から、企業再生の現場の生々しい話、そして同氏が積極的に提言活動を行っている電力市場の再設計に関する話題まで、色々ととても興味深い話を伺うことができた(個人的には、電力市場の再設計の問題は、僕自身、アメリカのEnergy LawをLaw Schoolで学び、日本の電力市場の問題を環境科学のMSの卒論の中で取り扱っていることから、とりわけ興味深かった)。その中でも、以下の言葉が非常に印象的だった。

「長期的キャリアは計算して構築できるものではなく、目の前の仕事に全力で打ち込んだ結果ついてくるものである。」

華々しい経歴と、ビジネスそして政界まで広くわたるネットワークを持ち、様々なフィールドで活躍される同氏だが、自己が歩んできたキャリアは、目の前にある自己の興味のある仕事に打ち込んできた結果形成されたものであり、決して計算高く戦略的に行動した結果ではないと言っていた。曰く、

「企業再生をはじめ、非常に切迫した状況で、計算高く何をするかを考えている、いわば半身で構えている人間は、上司からすると非常に使いにくい。上司からすると、そういった人がどんなに優秀であったとしても、彼らが満足するような仕事を与えることを考えることの負担が非常に大きい。非常に切迫した状況では、何事にも全力で取り組んでくれる人のほうがはるかに価値が高い。長期的なキャリアの形成というのは、そういった一つ一つの仕事の積み重ねであり、計算高くうまくやりくりできるものではない。」


 *   *   *

ビジネス・スクールにいると、様々な人から話を聞いたり、色々な業界・キャリアパスについて考える時間が多くあるため、どのようにするか(How)よりも、何をするか(What)について、色々と考えてしまう傾向がある。しかし、一歩離れて考えてみると当たり前のことであるが、実際は、多くの場合、何をするかより(与えられた条件の中で)どのようにするかのほうが重要である。MBAでも、起業の文脈においては、ideaよりもexecusion(実行力)が大事である、と繰り返し聞かされるのであるが、それは、起業以外のキャリア形成においても同様に当てはまることであると、改めて認識した。

そして、自分が「半身」ではなく、全力で仕事に取り組むためには、自分が心から興味を持てる/価値を信じることができる仕事を選ぶことが重要であると再確認した。MBAの授業に来るゲストスピーカー(成功したビジネスパーソン)は、皆口を揃えて「卒業後は、短期的な給与レベル等に惑わされず、自分の好きなことをせよ」と言うが、そのような選択が、単に自己実現の観点のみではなく、長期的にはキャリアの成功の観点からも道理にかなったものであるのだろうと、大いに納得した。


最後に、冨山さんからは、最近出版された本(下記)まで頂戴してしまった。早速読ませていただいたが、テクニカルな点にはあえて触れず、わかり易く実践的ノウハウを伝えることに主眼を置いた内容となっており、明快な語り口の文章ですらすらと読めてしまった。経営分析・企業再生に興味のある人には強く勧めたい。冨山さん、ありがとうございました!





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