2012年4月11日水曜日

サラリーキャップ攻略の重要性

以前のエントリーで触れたとおり、NFLにおけるサラリーキャップについて、49ersのCOOであるParaag Maratheから非常に興味深い話を聞くことができた。

サラリーキャップとは、選手に対する給与総額に関して何らかの仕組みを用いて上限を設定することをいうが、NFLにおいては、リーグ収入(より正確にはDesignated Gross Revenuesという概念だがここでは詳細には触れない)に一定割合を乗じた数が上限として設定されている。NFLにおいては、リーグ収入は各チームに均等にシェアされるので、各チームは同金額のサラリーキャップに服することとなる。(なお、シェアの方法としては、均等配分の他に、弱者を優遇する仕組み(MLB)と強者を優遇する仕組み(English Premier League)がある)

ここで留意すべきは、上限に服すべきサラリーは、必ずしもキャッシュアウトの金額とは一致しないという点である。たとえば、通常、契約時にはupfront bonusを支払うが、その金額は契約の期間に従い償却(amortization)され、(キャッシュアウトではなく)その償却分が毎年のサラリーとして認識されるからだ。そして、契約を移籍等の理由で解除する場合には、未償却の残高が一度に償却されサラリーとして認識される仕組みとなっている。

すなわち、選手獲得の予算を効果的に用いるためには、事前に将来のリーグ収入を予測し、サラリーの上限を計算することはもちろん、それに加えて、新たな契約の締結・既存の契約の解除に起因するupfront bonusの償却についても正確な予測を行い、ドラフトにおける新選手獲得に十分な予算を残しておく必要がある。(ドラフトは移籍市場と比べると割安に才能を獲得できるので、ドラフトに十分は予算を残しておくことは極めて重要である)

こういった計算は、特に選手の獲得・移籍・契約解除に関する不確実性が存在する状況においては容易なものではなく、緻密なシナリオ分析・期待値・リスク分析が必要となる。

この点は、サラリーに関する規制のないEnglish Premier Leagueとは極めて対照的で、NHLにおいては、数値分析に強いマネージャーがチームの経営部門に存在する必要性が極めて高いと考えられている所以である。

実際に、サラリーキャップに対する効果的な対応とチームの勝率との間には相関関係があり、サラリーキャップ攻略の重要性は、客観的データによっても裏付けられている。


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