2012年4月1日日曜日

Venture Capitalist に必要な資質 - パターン認識力


「Venture Capitalistの最も重要な資質はパターン認識力だ」


先日のエントリーでも紹介したFormation of New Venturesという授業で、自身Venture Capitalistでもある実務家教授Jim Ellisが繰り返し言っていた言葉だ。

スタートアップは、一つ一つ独特であって常に独自の課題にぶつかっていると思われがちだが、実は、直面している問題の多くは過去繰り返し起こったことである。大手企業と異なり経営資源/インフラに乏しいスタートアップにおける最大の財産は人であるが、その人の採用/解雇における問題(例えば、マネジメント・チームで不和が生じた場合にどう解決するか、現マネジメント・チームのパフォーマンスが芳しくない場合に外部人材の登用等をどのように行うか)においては特にそれが当てはまる。また、人事以外でも大きな意思決定、たとえば、大企業との提携/独立維持、外部から資金調達/内部留保の利用等の意思決定を現状のビジネスの状況に鑑み適切に行う際にも、過去の類似事例が役に立つ。これらの事項について、投資先に適切なアドバイスを提供できることがVenture Capitalistの必要な資質というわけだ。

以上は投資後の経営サポートに関する側面であるが、投資の意思決定の際にもパターン認識力は重要な役割を果たす。投資検討中の会社のビジネスモデルが過去/現在の類似事例に鑑みsustainableなものか、その創業者と似たようなスキル/経験を有した過去の事例の成功確率はどの程度であったか等を総合的に判断できる能力が、投資先の選定において極めて重要となる。

当然ながら、過去類似事例における解決策が常に妥当するわけではなく、妥当性については個別具体的に判断する必要がある。しかしながら、それは、そのような類似事例の活用自体の価値を否定するものではない。全く参考すべき事例がない中で、経営上/投資すべきか否かの重要な意思決定を行うことは、羅針盤を持たずに大海原を航海するようなものだ。重要なのは、類似事例で得られた経験を新たな事例にどのように活かすかであり、それが、教授の言うところのパターン認識力ということなのだと思う。

このパターン認識力は、Venture Capitalist以外にとっても極めて重要なスキルと考えるが、その点については、また後日書きたいと思う。


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