今日、Stanford大学School of Earth SciencesのDeanである、Pamela Matsonの講演を聴講した。彼女は、自己の専門分野である、土地利用が生物化学プロセスを経て気候に及ぼす影響につき、農薬使用を例に説明してくれた。備忘録の意味もかねて、その概要を共有したい。
- Sustainabilityの定義は様々あるが、私は、①現在/将来の人々の経済的なニーズを満たすことと、②大気、水、気候、エコシステムを保持すること、の2つを両立することだと考えている。
- 1950年から93年の間に、世界の人口は2.2倍になり、食糧生産は2.7倍になった。
- 食糧生産の増加は、主として農地開拓によるものであり、その結果、地球環境に悪影響を及ぼしている。
- 農地開拓に加えて、近年では、肥料の使用量の増加が大きな問題となっている。
- 私はメキシコのYaqui Valleyで詳細な調査を行ったが、肥料の過度の使用による窒素の増加が、温暖化ガスの発生に大きく寄与している。
- なぜ不要なほど大量の肥料を用いるのか、当初はとても不思議に思っていたが、調べてみると、Credit Unionが自己の貸し出し金額を増やすために、農家に多くの肥料を買うようアドバイスする、という構造的な問題があることを発見した。このような視点は、純粋な研究者からは出てこないものであり、問題解決のためには、分野を超えた専門家が知識を結集する必要があることを痛感した。
- なお、中国は、今後国民の食料ニーズを満たすためには、食糧生産を2倍にする必要があるが、生産性を高めるために、肥料の使用量を過度に増やしている。
- 我々が行った調査によると、中国は、肥料の増加に依存しなくとも生産性を高めることは可能だが、米国と異なり零細農家が運営しているという構造から、農家の意思決定に影響を与えることは難しい。
- これらの経験を踏まえ、今後、世界のSustainability実現のために我々が必要なことは下記の3つに集約されると思う。
- 異なる分野の専門家が協力し、異なる知識、ツール、アプローチを総動員すること
- 知識を行動に移すこと
- リーダー及び国民が問題を正確に認識すること